≪完全初心者向け/いまさらきけない
教えてほしい楽器のこと≫
こんにちは!元楽器店店長が答える
≪教えてほしい楽器のこと≫のコーナー
今回は「安いアコギと高いアコギはどういう違いがあるの?」
についてお話ししていきます。
どうぞごゆっくり読んでいって下さい。
パッと見で、
高いギターも安いギターも
同じに見えるのですが、
価格に大きな違いがあるのは
何でですか?
安いギターも高いギターも
そんなに違いはありませんよね?
初めてギターを購入されるお客様からよくこのような質問を受けました。
「楽器は値段の分だけ必ず違いがある」とは楽器経験者からよく聞く話しですが、
実際問題、違いはたくさん出てきます。
細かく見ていけば、各種パーツのグレードの違いや塗装の違い、
細かい作りや装飾の違いなどいくらあげてもきりがありません。
しかし私が一番違いを感じた所は、「使用されている木材」でした。
ワシントン条約で輸入が禁止されている
「ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)材」や
「ホンジュラス・マホガニー材」「ハワイアン・コア材」等の
希少な木材等を使用したギターはいうまでもありませんが、
通常よく使用される木材の「スプルース材」や「マホガニー材」「コア材」等は
安いギターでも高いギターでも同じように使用されています。
では、なぜ同じ材でも値段に違いが出てくるのかというと、
「同じ1本の木でも、部位によってまた
切り出し方法によって希少性が異なってくる」からです。
私はこの例をお客様に説明するときに
「まぐろ」を例に例えてお話ししていました。
皆さんがよく行くお寿司屋さんを思い出して下さい。
一匹のまぐろでも使用する「部位」によって、
「大トロ」や「中トロ」「中落ち」など価格が変わります。
木材でも、1本の木から取れる「部位」
によって楽器にとっての希少性が高まったり、
そりにくい(乾燥後の変化が起こりにくい)切り出し方法
によって1本の木からは少ししか取れなかったりして
価格が変わってきます。
一般的に「音の伝導」は、木の年輪がスカスカの周辺材よりも、
年輪が詰まった中心材の方が鳴りやすいとされています。
木目が暴れていない綺麗な柾目カットされた材の方が
音だけでなく見た目も綺麗なギターに仕上がります。
図でも分かるように、乾燥後反りが少ない柾目カットを施すと
1本の木からは、使えない箇所がたくさん出てきて非常に非効率です。
余った部位はもったいないので、
有効活用するために安いギターに加工されていきます。
また、乾燥させるには燃料費もかかりますし、
時間もかかります(一般的に「シーズニング加工」ともいいます)。
寝かせることで費用はさらにかさみます。
シーズニング加工をした結果、それでも変化を起こした材は捨てられ、
最後に残った反らない(変化の少ない)、
見た目も綺麗な、目の詰まった材が高価な木材
となるのはいうまでもありません。
どこかワインの熟成にも似たようなところがあるのかもしれませんね。
このような厳選された木材を使用したギターは
弾くほどに音の鳴り方に変化が出てきて、
弾けば弾くほど深い味わいのある音色に変化していきます。
少し話しはそれますが、高いギターはナチュラル系が多く、
安いギターは、赤・青・黒など塗装をされているケース
をよく目にしませんか?
ナチュラル系は美しい木目を楽しむ事もできます。
カラフルな塗装を施されたギターも個性があり充分にいいですが、
初心者セットなどの安いギターは、
木目を隠すための塗装といってもいいのかもしれませんね。
しかし、単純に安いギターは「音が悪い」とか
「すぐに反って弾きにくくなる」とか、
高いギターだから「音が良い」とか
「絶対に反らない」ということも一概に言えません。
「反り」に関しては、低額・高額にかかわらず、
購入後管理する湿度の問題等も大きく関係してきます。
音の良し悪しに関しては、そもそも音に「良い悪い」は存在しません。
個人によったり、時と場所によっても音の良し悪しは変わります。
「高音が好きな人もいれば、嫌いな人もいる。」
「低音が好きな人もいれば、嫌いな人もいる。」
赤ちゃんの泣き声が心地よく感じるのも、そうでなく感じるのも
人によったり、時と場所によったりするかもしれません。
安いギターは、反ってしまい弾きにくくなるリスクが高く、
弾き込んでも味わいのある深い音色に変化していくことは少ない。
高いギターは、長く使っても反りにくくいつまでも弾きやすい可能性が高く、
ビンテージになっても音に味わいが増して
使い込んだ鳴りのいいギターになる可能性を秘めている。
といった事が言えるでしょう。
ギターはプラスチックや金属などを型取り加工して作られたものではなく、
生きた木を使っています。
同じブランドの同じ品番と言えども、
世界に2つとして全く同じギターは存在しません。
安くてもいいギターに巡り会うことも実際にあります。
このときは「当たりだ」と思いましょう。
良い悪いは人によって変わります。
愛情を込めたギターは、値段にかかわらず
きっとあなたの一生の宝物になるでしょうし、
親から譲り受けた思い入れのあるギターだったら
どんな高いギターよりも大切でしょう。
私も、初めて自分のお小遣いで購入した
モーリスというブランドのギターは、
どんなギターよりも思い入れがあります。
いまではもう弾くことはできませんが‥‥。
安いから悪く、高いから良いというのではなく、
高いギターの特徴と安いギターの特徴として
ギター選びの一つの参考にして下さいね。